聞き取り調査 History

江の島の住民14人の方々に下記のような質問をさせていただきました。

  • 1.幼少の頃、江の島はどんな海でしたか?
  • 2.タツノオトシゴはいましたか?
  • 3.タツノオトシゴが減ってきた理由は、なんだと思いますか?
  • 4.どんな海藻がありましたか?
  • 5.最後に、タツノオトシゴが生息する海を取り戻すため、水質調査をした上で、海底に藻場を再生することには賛成ですか?

回答の結果、高齢の方は「タツノオトシゴは確実にいた」と答えてくれました。そして皆さん口を揃えて「昔の江ノ島はすごく綺麗で水は透きとおり、磯があって島内で塩を作ったり、のりを採ってそのまま食べたりした」と言います。
しかしその子供達の世代は「海が臭い」など汚いイメージが強い意見が多数あり、世代によって話が大きく違うと感じました。アマモについては誰一人見た事がないとの返答が多かったのですが、アマモ自体を知らなければ答えようがないと感じています。
タツノオトシゴはどうやら、いたらしいです。しかし今はいなくなってしまった。どうすればよいでしょうか?

古澤さんは「藻場を取り戻す」シンボルとしてタツノオトシゴを掲げておられますが、タツノオトシゴと言っても江の島付近や相模湾には大きく分けて2種類がおり、はたしてどちらだったのか?という疑問が湧きました。標準和名のタツノオトシゴと、以前はタツノオトシゴと混同されていて2000年に別種とされたハナタツです。この2種は生態が違うのですが、どちらがいたのでしょうか?

2種類は見分けがつきますか?

分かります。注意して識別点を頭に入れてみれば、普通のダイバーさんでも分かると思いますよ。
一番大きな違いは、頭にあるトサカ状の角の形でしょう。タツノオトシゴの角は滑らかで高く後方に曲がっており、ハナタツのそれはギザギザで低くまっすぐ上に向かっています。タツノオトシゴは水深数mの浅いところに生息しており、ダイバーが潜る水深10メートル以深に生息するものはだいたいハナタツです。
海に潜らない方が見たのはタツノオトシゴの可能性が高いです。一方、漁師さんが網にかかると言っていましたが、その場合はハナタツかも知れません。そうなると両方いたのかもしれませんね(笑)。両種は棲み分けがはっきりしていて、ふつう共存はしません。浅いところでアマモや海藻類にからんでいるのはタツノオトシゴ。ダイバーが深いところで写真撮影しているのはハナタツです。

ハナタツ

ハナタツ写真提供:ダイビングショップNANA

タツノオトシゴ

タツノオトシゴ写真提供:ダイビングショップNANA

江の島にはタツノオトシゴ、ハナタツ両方が生息していた可能性がありますね。
葉山にも2種類が生息していると聞いています。このことから両方いたと定義してよいものなのでしょうか?

その事は今後の謎ときとして取っておきましょう。まずは江の島の漁師が獲ったタツノオトシゴを検証しましょう。それを調べる事によって、生息環境が推定できそうです。もしタツノオトシゴが確認されれば、アマモを含む藻場があった裏付けになります。
しかし、ハナタツだった場合は目指すべき目標がアマモから外れてきてしまうかもしれません。いずれにせよ、タツノオトシゴもハナタツも良好な環境が保たれている海に暮らしている生き物に違いはありません。

それでは、漁師さんが獲ったタツノオトシゴを再度、江の島にいって、写真を撮り、工藤さんに送りますね。
私達は、無理やりに「江の島にタツノオトシゴがいた!」といないのにもかかわらず、仮定して、このプロジェクトを進めるつもりはないです。もし深場に生息するハナタツだった場合、私達の目標は、ハナタツが戻ってくるくらいに江の島の海をキレイにする!に変更します。笑
そして、私達にできることはありますか?

ハナタツが拠りどころにしているのは、刺胞動物のサンゴの親戚にあたるソフトコーラルです。タツノオトシゴ類はご覧のとおり泳ぎが下手で、尾を何かに巻き付けて生活しています。それが浅い所ではアマモを含む海藻類で、深ければソフトコーラルとなります。
ソフトコーラルはやはり水質の変化に敏感で、水が汚れてくると姿を消してしまう。そして海底深くの岩にくっついているものですから、いなくなったとしても誰も気づかないです。
しかし、そこを拠りどころとしていたハナタツがいなくなれば、ソフトコーラルがいなくなったと想像できる訳です。

沖縄ではサンゴを再生していますが、もしかしたら私たちがダイバーにお願いしてソフトコーラルを植える事は相模湾で可能なのでしょうか?

ソフトコーラルを人間が植えて増やした例はないですね。間接的ではありますが、やはりCODなど水質を改善する事がよいと思います。
※CODとは、水中の有機物の量。台所から出る排水やトイレからの汚水など。

CODを減らすために我々に出来る事は?

暮らしの中で生活排水の出し方に気をつけると言う事でしょうか。それから海底に沈んでいる空き瓶、空き缶などのゴミが波によって海底をゴロゴロと転がると、ソフトコーラルを痛めつけてしまいます。
それから初心者ダイバーがバタバタとフィンで蹴り回れば、海底が荒れてソフトコーラルが消えてしまう原因になるのです。色とりどりのソフトコーラルの群生があった西伊豆のあるダイビングのメッカでは、1日に何百人ものダイバーが入るようになったらボウズの岩肌だけの風景に一変しました。

もしタツノオトシゴがいた場合、アマモを植えると言う事でよいですか?

タツノオトシゴは海藻を生活基盤にしていますので、海底が砂地ならアマモ、岩場ならそれ以外の海藻がいいでしょう。同じ海藻類でもアラメ、カジメなどの茎の太いものは不適当で、やはり一番よいのはアマモかホンダワラ類です。
現在はどちらも人工的に増やせる技術が確立されています。

現在の江の島の多くは砂地ですが、昔は遠浅の岩場だったと聞いています。漁港や防波堤が出来てどんどん砂が溜まりだしたそうです。地形も変わりました。
住民のお話を総合すると、どうやらアマモはなかったようです。
その場合は昔からあったホンダワラ類を植えればよろしいでしょうか。またホンダワラ類を養殖しているような施設はあるのでしょうか?

アマモ

アマモ写真提供:ダイビングショップNANA

アカモク

アカモク写真提供:ダイビングショップNANA

アラメ

アラメ写真提供:ダイビングショップNANA

カジメ

カジメ写真提供:ダイビングショップNANA

ホンダワラ類を正確に言うとアカモクです。ホンダワラは関東ではあまり見ない西日本の海藻です。アカモクはまさに今、県水産技術センターが藻場造成技術を現場に普及させているところです。多くの海藻は、繁殖する時に目に見えない小さな遊走子を遠くまで飛ばします。
それに対して、アカモクをはじめとするホンダワラ類は肉眼で見える大きな卵を海底に落として増えます。大きなものですから遠くには散っていかず、藻場が一旦減ってしまうと自然任せでは再生が難しいのです。
そこで人間が、卵を落とす前の母藻を別の場所から採ってきて、袋に入れて再生したい場所に沈めておきます。すると、袋から成熟した卵が落ちてそこで育ち、藻場が再生されてゆくのです。

私(古澤)はアカモクが群生する浅い海底にタツノオトシゴがすみ、水深の深いところではソフトコーラルにハナタツが生活していた光景が想像できました。
江の島近くの海はこの何十年間で地形が変わってしまったそうです。特に西浦の場合、昔は磯だったけれど砂地になってしまったと言います。そして昔アマモがあったかどうかは、誰も分からない。私はおそらくなかったと思っています。
そしてもし、近年になって砂が海底に多量に入っていたとしたら、昔を取り戻すために砂を除去するという選択もありますか?

江の島の原風景を描くなら、きっとそうなのかもしれませんね。
そして底質変化に対し抗う事は、むなしい取り組みに終わると思います。岩場が砂地に変わる変化と言うのは個々の人間が食い止める事はとても難しい。海底掘削や消波ブロックを入れるなどの大きな土木工事になってしまい、それは我々としてはやりたくない事。むしろ砂地に変わってしまったのなら、砂地なりのいい環境をつくっていく方が自然です。
だから考え方としては昔の姿を取り戻す「再生」ではなく新たな環境を創る「環境創造」なのです。調査したアンケートによると、「ヨットハーバー」の影響を大勢の方が指摘しています。あれだけ大きく人間が環境を変えてしまった今、それがない時代には戻せません。今ある条件の中で、かつていた生き物がもどってくるような場をつくる活動は「創造」になるのです。

次に遺伝子の問題です。ここ最近、工藤さんが立ち上げた「全国アマモサミット」が盛り上がるなどアマモブームになってきました。アマモには遺伝子の多様性があると聞きました。
もし植えるなら同じ地域の同じ遺伝子のものが良いに決まっていますよね。

はい。その通りです。これは環境倫理に関わる話になってきます。陸の世界ではこの20年ほどで遺伝子攪乱の問題がクローズアップされてきました。海の中でも、新たな問題として認識しなければなりません。遺伝子攪乱で有名なところはホタルやメダカでしょう。
なぜホタルが光るかというと、交尾の相手を探すためです。ゲンジボタルは西日本と東日本で発光パターンが異なり、西日本のホタルを東日本に放しても光のコミュケーションが取れず繁殖できないのです。
また、メダカは身近な淡水魚ですが、1980年代に遺伝的に大きく異なる北日本と南日本の集団に分かれることが分かりました。その後さらに研究が進み、両集団はキタノメダカとミナミメダカという別種となりました。別種の魚なのですから、無分別な放流によって純血を乱してはなりません。
アマモは北海道から鹿児島まで同一種が日本全国に分布していますが、遺伝子を調べてみると地域間で大きな違いがありました。アマモは大きく重い種子で増えますから、海流で遠くに流される事は稀です。岬があったりすると同じ湾内で代々同じアマモが育つのです。例えば、相模湾周辺でも三浦半島を隔てた東京湾と相模湾で遺伝子が違います。そして東京湾内でも富津岬-観音崎ラインの外と中で違います。
だから三浦半島にはアマモを混ぜてはいけない海域が3ヶ所も存在します。だから、相模湾でアマモを育てたいけれども手に入らないからといって、近くの東京湾の群生地から安易に持って来る事は許されないのです。異なる遺伝子のアマモが混ざったらどんな影響があるのかは、まだ分かりません。
しかしサイエンスに携わる者として、分からない事はやるべきではないと考えています。これは予防的原則といいます。リスクが想定される場合は極力それを排除していこうという考えです。

アカモクにも遺伝子の多様性がありますよね。

それについては十分調べられていません。しかし予防的原則からすると、遠くのものを持ってくるべきではありません。

同じ相模湾内のアマモの移植でも、ある群生から株を採ってしまうと、そこのアマモを減らしてしまいます。我々は同じ遺伝子の種子を育てて、その苗を植える方がいいと思うのですが。

それがまさに理想、あるべき姿です。人間の臓器移植と同じで、ドナーに与えるダメージをいかに軽減させるかという配慮が必要です。ドナー群落がフサフサに茂っていればまだよいのですが、これは断言できますが、相模湾にはそんな群落はありません。大なり小なり相模湾のアマモ場は危機的な状況なので、原則として移植はするべきではありません。

アマモもアカモクも移植が駄目だとするとどういう方法がありますか?

アマモは花が咲く時期に地下茎から花だけの枝ができます。受粉した後の花だけの枝を採ってきて、それを施設内で育てれば、熟した種子を得ることができるのです。その種子を蒔けばアマモを増やせます。アマモは多年生で、地下茎を残せば毎年そこから新たな花枝が伸びてきて花を咲かせます。これに対して移植では、地下茎ごと堀り採ってしまうからまずいのです。
アカモクは一年生なので、アマモほどナーバスになる必要はありません。放っておいても、1年で枯れてなくなってしまいます。アカモクの群落から卵ができている母藻を選んで採集し、袋に詰めて再生させたい場所に設置すればよいです。

アカモクが卵を落とす時期はいつですか?

アマモは春に花を咲かせ、初夏に種子が成熟して盛夏に種子が落ち、初冬に発芽して冬から春にかけて育ちます。
アカモクの場合は、丁度サクラが咲く時期に卵が熟して海底に落ち、夏の間は眠っていて水温が落ちると芽が出て冬の間にぐんぐん伸びます。

タツノオトシゴがいた場合はアマモとアカモク両方植えるのもありですか?

ありですね。アカモクは夏の間枯れてしまうので、その間はアマモが住みかになります。両方あれば、アカモクとアマモを行ったり来たりする訳ですね。もしかすると昔はそのような事していたのかもしれません。

水産技術センターで作ってもらう事は可能ですか?

アカモクは食用となる水産資源なので、現在もセンター内で育てています。
しかしアマモ場再生の事業は終了しました。再生技術を確立して、市民や漁業者にそのノウハウを渡したと言う事で、卒業したのです。今も技術的なアドバイスはできますが、種子や苗が欲しいとのリクエストにお応えする事はできません。

どこかの学校とタッグを組む事はできますか?

可能だと思います。神奈川県立海洋科学高校がアマモを育てています。もと三崎水産高校という、県内唯一の水産系の高校です。ここでは相模湾産アマモの花だけを取ってきて、そこから種子を取り苗にまで仕立てる事をしています。花を一緒に採取する事も出来ると思います。花は潮が引いた短時間に採らなければならないため、多くの人手が必要です。
参加者が多ければ多いほど一杯花も集まります。そうなれば、学生と一緒に採った花を用いて、水産技術センターの技術を使って種子がつくれると言う事です。多くの種子を蒔ければ、アマモ場ができる可能性が広がります。

アカモクは相模湾産の苗をつくっているのでしょうか?

今は相模湾産のアカモクの卵を付着させた種糸を水槽内で育てているので、センターに来ていただければ見る事ができますよ。

ハナタツとタツノオトシゴ

江の島の住民の方達とお話をして、水産技術センター工藤さんとお話をして、
次に調べることが、決まった!!

①江の島にもう一度行き、江の島の漁師さんが釣り上げたのは「ハナタツ」なのか「タツノオトシゴ」なのか?調べに行く!!

それにより、藻場の種類が見えてくるということ。

・ハナタツだったら → 深場のコーラルの森
・タツノオトシゴだったら → アマモ・アカモクの森(ホンダワラ類)

藻場を復活(創造)することが、ハナタツかタツノオトシゴが戻ってくることを意味する。

②アマモにせよ、アカモクにせよ、移植はNG。

遺伝子が違うから、相模湾産のアマモやアカモクでないといけないことがわかった。

アカモクは、水産技術センターで相模湾産を育てている。でもアマモは育てていない!!
神奈川県立海洋科学高校に行ってみよう!!

そして2016年5月29日 ハナタツがいたのか?
タツノオトシゴがいたのか!?調べに行った!!

前回、工藤さんに海さくら事務局にお越しいただいたとき、「タツノオトシゴが江の島にいたかどうか!?は、江の島の住民の人がもっている標本から判断できるかも!?」というお話がありました。
そこで、上重(スタッフ)が、再度、タツノオトシゴかどうか、わかりませんが、鮮明な標本の写真を撮影してきてくれました。この標本は、江の島で採取したものだそうです。下記の写真をご確認いただき、この標本の生物は、「ハナタツ」なのか「タツノオトシゴ」なのか?教えていただけないでしょうか?

これらの写真で同定可能です。左上から順にハナタツ、ハナタツ?、タツノオトシゴ、タツノオトシゴ、ハナタツ、ハナタツ、タツノオトシゴ。
両方いたのですね。凄い!何と貴重なデータでしょう。見慣れれば皆さんでもお分かりでしょう。

工藤さんありがとうございます。上重さん(海さくらスタッフでこのプロジェクトで大きな力となっているプロカメラマン)両方いましたね!!万歳!!!よーーーーし、燃えてきた~!!
江の島には、タツノオトシゴもいて、ハナタツもいた。コーラルの復活は、今は難しいけど、アマモとアカモクを遺伝子は相模湾産にして、移植をしないで育てるという目標ができました!!そだててくれそうな神奈川県立海洋科学高校に行ってみます。

2016年4月27日(水)神奈川県立海洋科学高校に行ってきました

園原先生に、アマモを育てる水槽が、ココにある小さいものだけな事と、生徒の対応だけでも大変なため、育てるお手伝いは、できないとのこと。ただ、種の収穫などは、一緒に協力しますと言ってくださいました。

2016年6月9日(木)江の島の住民の皆様に海創造プロジェクトのお話をさせて頂きました

2016年7月1日(金)公益財団法人神奈川県栽培漁業協会に行ってきました

専務理事の今井さんに、生き物を扱っている施設であり、関係者以外の人の立ち入りを原則禁止していること、施設内の水槽には魚がいる為、そこでアマモを育てることは危険とのことから、神奈川県栽培漁業協会ではアマモの栽培は出来かねるとのお返事でした。

2017年1月28日(土)「海藻おしば教室」を実施

海創造プロジェクトは、海の中に「森」をつくりタツノオトシゴなどの棲家や、色々な生物の棲家を作っていきます。「海草」自身は、海をキレイにもしてくれます。今後、アマモを育てていくなかで、「海藻・海草」の知識や、大切さをゴミ拾い参加者に知っていただきたい。それを楽しく伝えるために「海藻おしば教室」を開き、海の森の大切さの講義や、海藻は使って絵葉書を作りながら、色々と学んでいただきました。

2017年3月11日には、葉山で「海さくらWゴミ拾い」を実施し、葉山の海の中の森をダイバーさんと一緒に清掃し、葉山に生い茂る「海の森」を陸でゴミ拾いしている方達と共有しながら生で体験していただこうと思っております。

これからも頑張るぞ!!

まだまだ旅は続く...